生き残れる企業を見分ける方法

「生き残れる企業が外からわかるのか」ということについて話をさせていただきます。

結論から言うと、判断の指標となる無形資産が財務諸表等に表れないため、その企業が生き残る条件を備えているのか否か外部の人間にはわからないと思います。ですが、間接的に推し測る方法はあると思います。

前回のブログで、企業が生き残る条件を述べました。その条件を満たすためには、新たな機能を生む破壊的技術にかかわる研究開発への支出、事業戦略や企画提案を作成できる人材を育成する人的資本への投資、それに加えて様々な業界で新たな機能を生んでいるICT (情報通信技術)への投資など、無形資産投資を積極的に実施する必要があります。

しかし、財務諸表等に定量情報に基づいて表される有形資産とは異なり、目に見えない無形資産は企業のバランスシートにうまく表されません。また、その支出は費用として計上されて資産を構築する投資として扱われないことから、財務会計上では利益を圧迫するものになります。 このことは、経営者が無形資産投資を決断しにくい要因にもなっています。

投資家にとっては企業価値を高める資産と考えられる無形資産が、利益を圧迫して企業価値を低く見せかねないという矛盾は、現在の会計システムで企業価値を評価する限界を示していると思います。

総務省の調査によると、ITC投資において、ICT化の効果を得るためには、ICT化を積極的に実施することに加えて、ICT化に伴う組織改革や人的資本への取組・改革を実施することが重要であることが示唆されています。また、すべての産業において、売り上げと利益が増加した企業群のほうが、ICT化の進展が高く、さらに組織改革や人的投資を実施しているということが示されています。さらに、 ICT化に伴う組織改革や人的資本への取組・改革の組合せをCIO (最高情報責任者)設置の有無に置きかえてICT化の効果を観察した結果では、 CIOを設置しICT化の進展が高い企業の方が、ICT化の経営改善効果が高い結果となっています。

この調査で統計分析上有意となった項目のうち、業績向上に寄与する組織改革・人的資本への取り組み項目は、製造業では以下の4つとなっています。
  ・雇用者の社内における流動性の促進
  ・業務に関するノウハウの社外との共有
  ・ICTツールやICTサービスの運用や構築に関わる専門の人材の新卒採用
  ・CIOやICT担当役員を設置
ちなみに、製造業における業績向上に寄与するICT化の進展項目は以下の2つです。
  ・社員へのスマートフォンの貸与
  ・外部向けSNSアカウントの開設

出典:総務省「ICTによる経済成長加速に向けた課題と解決方法に関する調査研究」(2014年3月)

話を「生き残れる企業が外からわかるのか」という問いに戻しましょう。
生き残れる企業かどうかを財務諸表等から定量的には読み取れないものの、 CIOやICT担当役員を設置しているかどうかで推し量ったり、ホームページなどから得られる情報を活用し、上記4つの業績向上に寄与する組織改革・人的資本への取り組み項目を重要視した施策をうっているいるかをどうかを調べ、企業側の生き残りたい度を相対的に推定するのは可能かもしれません。

但し、CIOを専任者で設置している企業は3.3%しかなく、兼任を含めても29.5%に過ぎないという報告もありますし、またCIOの育成は難しいという事情もあるので、この指標だけで企業価値を判断するのは厳しそうです。

多くのところで指摘されるように、企業価値を正しく評価するためには、投資家に対して、企業が無形資産の情報を開示する仕組みが求められているのだと思います。

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