IT人材の不足とリカレント教育

「労働力の需要と供給」の投稿に関連して、不足しているIT人材とリカレント教育について話をさせていただきます。

2020年度 年次経済財政報告は、技術革新に対応した人づくりを行うためには、機械では代替が困難な能力を伸ばすとともに、そもそものAI 等の先端技術を開発し専門に扱える高度なIT人材(*)の育成を行うことも併せて重要な課題だと指摘しています。

経済協力開発機構(OECD)の調査によると、IT人材の割合をG7諸国で比較すると就業者に占める割合は日本では1.8%ですが、英国5.2%、アメリカ3.0%など、他の6か国は日本よりもその割合が高く、IT人材が諸外国と比較して少ない可能性が考えられます。 また、日本はIT人材の約70%がIT産業(「ソフトウェア業」、「情報処理・サービス業」、「インターネット付随サービス業」)に集まり、30~40%台の欧米主要国に比べ業種別の偏りが大きいと指摘しています。日本ではIT 企業以外の企業にIT の専門家が少なく、企業経営におけるIT の活用の阻害要因になっている可能性があります。例えば、23 か国の企業幹部を対象に実施したアンケート結果をみると、ビッグデータやアナリティクスを用いた意思決定割合は、他のG7諸国や調査対象国平均の60%以上に対して、日本は約40%で最下位となっています。
(*)IT人材:日本では国勢調査におけるシステムコンサルタント、システム設計者、ソフトウェア作成者、その他の情報処理・通信技術者

内閣府は、AI時代の到来を踏まえ、IT人材について、2020年に先端IT人材(*)が約5万人不足し、一般IT人材が約30万人不足しており、2030年には60万人不足すると試算しています。 不足を解消するためには、先端IT人材を毎年約2~3万人、一般IT人材を毎年約15万人追加育成することが急務であると指摘しています。
(*)先端IT人材:ビッグデータ、IoT、AI等を担う人材

このような状況を踏まえ、文部科学省は、教育改革に向けた取り組みとして、小中高校と大学・高専における取り組みを公表しています。取り組みのなかには、多くの社会人に、基本的情報知識とAIの実践的活用スキルを習得する、リカレント教育の機会を提供することも示されています。具体的には、職業訓練の推進やスキル習得プログラムの拡充(就職等への活用促進)を掲げています。数理・データサイエンス・AIを育むリカレント教育を多くの社会人(約100万人/年)に実施することを目標としています。

前回の投稿「労働力の需要と供給」で、「自分のキャリア形成を考えながら、これからのリカレント教育をどう受けていくのかについて、自分に合ったプランを作ることがエンジニアの課題」と書きましたが、「市場価値」の一構成要素である「市場性」をより高めるために、IT関係のスキルを高めるのもひとつの考え方だと思います。 リカレント教育のやり方としては、文部科学省が支援する職業訓練やスキル習得プログラムへの参加だけでなく、自分で探してオンラインレッスンを受けるとか、大学院大学で学ぶなど、自分にあったものを探すのがよいでしょう。

オンラインレッスンの例としては、“カフェトーク(Cafetalk)”を利用した「IT・プログラミング」関係のレッスンなどがあります。初心者向けのレッスンなどを利用して、いろいろ試すきっかけが作れます。あるいは、スキルを有する身近な人に依頼して個別講義を受けるというのも手だと思います。
大学院大学で学ぶ例としては、“東京都立産業技術大学院大学”で「情報アーキテクチャコース」を履修して、情報システム学修士の学位を取得するのはどうでしょうか。大学院大学の中では比較的安価にリカレント教育が受けられ、東京都住民の場合は入学料が半額になる特典がついています。

人生100年時代を生きるためには、自分のやりたいこと、進みたい道と、労働市場の状況を考慮して、自分に合ったキャリア形成のためのリカレント教育プランを作ることが重要です。40代、50代の方は、定年後の働き方も頭の片隅において、定年前の準備を含めて考えることをお勧めします。

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Photo by luis gomes on Pexels.com

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