雇用にかかわる社会環境変化にマッチしたキャリア形成

バリューチェーン経験プラン・ビギナーコースにおいて、20代の受講者とのインタラクティブ・ワークで使った資料から、日本の雇用にかかわる社会環境変化とそれに対応したキャリア形成について話をさせていただきます。

経団連会長もトヨタ自動車の社長も「終身雇用は維持できない」と明言しています。また、トヨタ自動車は2021年にも、職位や勤続年数などに応じて賃金を引き上げてきた定期昇給をなくし、仕事の実行力などの人事評価で昇給額を決める方式に見直すと発表しています。評価が低ければ定昇がゼロになる可能性もあるようです。

働き手が減少していく社会環境の中で、優秀な若手を引き留めるために、企業の雇用・報酬体系は、「終身雇用」、「年功序列」、「新卒一括採用」というシステムから、「流動雇用」、「即時清算」、「常時採用」に変化していきます。端的に言えば、会社のメンバーに入れてからやってもらうJobを決めていた「日本型雇用」から、事業の職務に対して直接雇用する「Job型雇用」に近づいていきます。事業や職務がなくなれば雇用契約終了です。正社員という雇用形態だけではなく、業務委託などの雇用形態が増えていくと思われます。

なぜ優秀な若手を引きとめなければいけないのでしょう?
理由は二つあります。

ひとつは、様々な業界で10年~20年スパンで技術は大きく変わっていくということです。たとえば世界のスマートフォン出荷台数は、10年を経て2017年にピークを迎え減少に転じています。一方世界のウェアラブルデバイス出荷台数は、2020年にはスマートフォン出荷台数の1/4に達すると推定され成長期に入っています。近い将来、ウェアラブルデバイスがスマートフォンに取って代わるかもしれません。また最近では、生産台数でははるかに及ばないテスラの時価総額がトヨタを超えたというニュースもありました。様々な業界で事業転換をはかるため、「日本型雇用」から「Job型雇用」に変わっていくのです。高いインセンティブを与えて、新たな事業の職務に必要なスキルと実務経験をつんだ人を採用する一方で、事業転換に応えられない社員には退職勧奨せざるを得なくなります。

もうひとつは、日本企業は生産性が低いため収益力が低く、投資家の期待に応えられずに低迷しているということです。たとえば日本企業のROE(自己資本利益率)はばらつき少なく7~8%の水準で推移していますが、欧米企業は10%を超えており、15%超も4割程度あります。日本企業は生産性・収益力を高めるため、「日本型雇用」から「Job型雇用」に変わっていくのです。企業価値を高めるために、経営人材も含む人的資本や技術や知的財産等の知的資本、ブランドといった無形資産を確保し長期投資することが重要ですが、収益を圧迫するためそれらへの投資が抑制される中、市場イノベーションの期待は、企業連携によるオープンイノベーション戦略や優秀な若手人材に向かっています。

「Job型雇用」における評価指標はどうなるかというと、社内の相対評価ではなく、市場価値をベースにした絶対評価に変わります。グローバルスタンダードに則って、次工程につなげられる標準のアウトプットを、実践的なやり方でどんな状況でも再現できる能力が求められるのです。既存の企業文化ややり方のなかでしか通用しないアウトプットは評価されなくなります。これからは、「Job型雇用」で採用された人と仕事ぶりやアウトプットを比較される機会が、社内で増えていくのではないかと思います。「なんとかなるだろう」と考えて放置しておくと、身動きできなくなるリスクが高まる社会環境変化を考慮して、自分に合ったキャリアプランとキャリア形成手段を考え、準備をすることが必要だと思います。

しかし、キャリア形成とひとことで言っても、必要なスキルはすぐに身につけられないですし、実務経験をつむ時間もかかりますし、年齢とともに求められるスキルも変わってきます。
だから、将来に向けて、今、社会環境変化にマッチしたキャリア形成の準備を始めなけれなならないと考えます。

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